SASAERUの特長、前回の続きです。2つ目の特長は座面に工夫をしたことです。介護な高齢者が椅子に座っている様子をみると、お尻が前に滑り出した座り方になっている場合がよくあります。施設では「仙骨座り」あるいは「ずっこけ座り」と呼ばれる座り方で、食事を食べるには向かない姿勢です。また上半身が前に曲がった状態になるので、呼吸なども行いにくくなります。そのため、介護施設では職員さんが利用者の姿勢の崩れを頻繁に直すことが業務の1つになってしまっています。

おしりが前に滑りでて姿勢が崩れることを防止して、せめて食事の時間中に姿勢が崩れることを防止できれば、職員は食事の介助に集中することができます。ではおしりが前に滑り出すのを防ぐにはどうしたらいいのでしょうか。座面に傾斜をつけるという方法が考えられますが、おしりの方を低くして膝の方を高くして座面に傾斜をつけると食事をするのが難しくなります。これは前回のコラムでお伝えした通りです。

私たちが考えたのは、おしりの部分だけちょっと沈み込んで、おしりが前に滑りださない座面です。これを実現するために、まずは座面のクッションの下の合板の形状を工夫しました。具体的には、おしりの部分を少しだけ凹ませています。これを実現するために、日本の工場ではオリジナルの型を作成し、座面のパーツを作成しています。そしてもう一つは、おしりの部分のクッションを少し厚くし、そして少し柔らかくすることでおしりをしっかりと安定させるようにしています。この2つの工夫で、おしりが前に滑り出るのを防いでいるのです。

おしりを椅子の奥深い位置にしっかりと固定しておくことができれば、骨盤が後傾せず骨盤が立った状態で食事をすることができます。この状態は、食事を飲み込む動作によい影響があります。上半身がしっかり垂直からやや前傾という状況になっていないと、飲み物を飲み込むいわゆる「嚥下（えんげ）」がしっかりと行われずに「誤嚥（ごえん）」が起きやすくなります。誤嚥とは、食べ物を飲み込んだ時に食道でなく間違って気管の方に入ってしまうことですが、良い姿勢でないとこの誤嚥が起きやすくなってしまうのです。

良い姿勢で食事を食べられるようにすることは、ご自分で食事が食べられること、食事の自立に不可欠で、そのために良い姿勢で食事ができる椅子を選ぶことも大切なのです。